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鼻詰まりの原因は?日常でできる解消方法や長引く場合の対処法を紹介

鼻詰まりの原因は?日常でできる解消方法や長引く場合の対処法を紹介

皆さん、「なぜか疲れやすい」「仕事のパフォーマンスがどうも上がらない」なんてことありませんか?

その悩み実は鼻が原因かもしれません。

鼻は呼吸する上で、体内に空気を取り込むための入り口です。

ここに異常があると、呼吸がしにくくなります。

実際に鼻が詰まっていないと感じていても、鼻の中を見てみると鼻の腫れが強く、知らない内に口呼吸になっている方が多いです。

口呼吸は慢性的な疲労、日中の集中力や運動能力の低下、夜間の睡眠障害などの様々な問題へとつながります。

これは生活の質を下げ、人生の大切な時間を低いパフォーマンスで過ごす原因です。

本記事では、鼻が詰まって苦しくてしんどい状態とは、鼻がどのような状態になっているのか、そしてそれに対する対処法を解説します。

基本的には苦しい鼻詰まりがある場合は、病院への受診をおすすめしますが、日常生活を少し変えるだけで、症状が軽くなるヒントをお伝えします。

鼻詰まりの原因

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鼻が詰まる大原則

鼻は空気の通り道です。

鼻のトンネルの中を空気がまっすぐ、のどの方まで通り、適切な気流が生じるということが鼻呼吸において最も大切な原則です。

『せまい鼻の中を空気が通っている』ということを、上記の図と内視鏡の見え方をイメージしながら、読み進めていただけると鼻詰まりの理解が深まるかと思います。

鼻には、体内に取り入れた空気をよい状態にする感染防御フィルターや加温・加湿器の役割があります。

これらの機能がうまく働かないと、感染を起こしやすく、呼吸に適した空気が肺に取り込めないために呼吸機能が低下してしまうんです。

鼻の内側を鼻腔と呼び、真ん中を鼻中隔という壁で左右に隔てています。

左右それぞれの鼻腔の外側には鼻甲介(びこうかい)という粘膜のヒダがあり、鼻粘膜の表面積を増やしています。

鼻の通りに関しては以下の図のように、4つの状態に分類することが可能です。

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それを構成する2つのパラメーターとして、

  • 医師の診察の所見
    医師がカメラで鼻を目で見て実際に、鼻の通りがよい、わるい。
  • 患者さんの自覚症状
    患者さんの感覚として、鼻がづまりがある、ない。

この2つの要素をかけ合わせて考えると、鼻詰まりという現象を4つの状態に分類して読み解くことができます。

ここで大切な考え方として、本当の鼻詰まりとまやかしの鼻詰まり(鼻詰まり“感”)というものがあり、これが鼻詰まりを複雑にさせる要因です。

しかし、状態①も③も、患者さんが鼻詰まりで困っているということに間違いはありません。

また、②に関しては、患者さんが自覚していない鼻詰まりです。

これを放置と、なぜか疲れやすい状態や、睡眠の質を低下させる原因となります。

症状がないからといって放置せずに、適切なアドバイスを受けることが大切です。

それでは、それぞれの状態について考えてみましょう。

鼻の構造がせまい

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これは、最も理解しやすい鼻詰まりを起こす原因です。

鼻の構造が狭いことで、空気が鼻の中を通ることができない状態です。

普段の呼吸に使う「鼻腔(びくう)」の周りには、「副鼻腔(ふくびくう)」と呼ばれる空洞があります。

この副鼻腔は、顔の骨の中にある複数の空間で、鼻腔とつながっているところです。

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この副鼻腔に炎症などの問題が起きると、つながっている鼻腔にも影響が及び、結果として鼻詰まりを引き起こすことがあります。

鼻中隔弯曲症、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などの主な病気があり、後ほど詳しく解説します。

鼻以外の構造がせまい

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これは耳鼻咽喉科医がファイバースコープでのどを確認することが必要です。

鼻の奥には上咽頭という部分があります。

この上咽頭が以下の理由で腫れたりすることで、鼻を通過した空気がそれより奥に進めない状態になってしまいます。

  • 炎症による腫れ
  • 炎症で生じた物質の付着
  • まれに上咽頭腫瘍(がんの可能性もあり)

この上咽頭の腫れで鼻詰まりが起きやすいのは子供です。

子供は基本的に口呼吸が苦手で、鼻呼吸が優位です。

また、子供は上咽頭に咽頭扁桃(アデノイド)という免疫器官があり、生理的に上咽頭の構造が狭いため、鼻詰まりとして自覚されることがあります。

鼻はかんでも出てこないけど、鼻がつまってフガフガしているといったお母さんからのキーワードはアデノイド肥大を想定します。

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鼻はせまいが症状がない

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②は、患者さんご自身に鼻詰まりの自覚症状はありません。

しかし、医師は鼻の中を見るなり、苦しくないですか?と問いかけたくなります。

では、なぜ医師と患者さんで認識が異なるのでしょうか?

これは、鼻詰まりは両方の鼻がしっかりつまったときに、初めて苦しいと感じるからです。

例えば、片側の鼻がほとんど通っていなくても、反対側の鼻がある程度通っていれば、苦しいとは感じません。

ご自身で試してみてましょう。

片方の鼻を指で塞いで、大きく吸ったり吐いたりして、あれ?全く通らない。

でも、反対の鼻で同じことをしたときにまあまあ通っているな。と感じることもあるでしょう。

あまり鼻詰まりを自覚していなくても、片側の鼻は粘膜がパンパンに腫れていることもあるのです。

その状態を診た医師が、苦しくないの?と聞いてくるのです。

鼻には鼻サイクルという、2〜3時間おきに左右どちらかの鼻が通って、反対側の鼻が腫れるという生理現象があります。

これがあることで、両方の鼻がつまってしまうということが起こりにくくなっています。

しかし、重症のアレルギーやかぜで両方の鼻の粘膜が炎症を起こすと、両鼻ともに粘膜が腫れてしまい、苦しさを自覚します。

以下の片鼻呼吸チェックリストと口呼吸チェックリストを活用してみて下さい。

それぞれ、一つにでもチェックがつくようであれば、隠れた鼻詰まりがあり、睡眠中の口呼吸となっている可能性があると言ってよいでしょう。

片鼻呼吸チェックリスト

  1. □口を閉じて、左鼻出口を指でおさえ、大きく右鼻で息を吸う。このときに少しでも抵抗あり
  2. □口を閉じて、左鼻出口を指でおさえ、大きく右鼻で息を吐く。このときに少しでも抵抗あり
  3. □口を閉じて、右鼻出口を指でおさえ、大きく左鼻で息を吸う。このときに少しでも抵抗あり
  4. □口を閉じて、右鼻出口を指でおさえ、大きく左鼻で息を吐く。このときに少しでも抵抗あり

口呼吸チェックリスト

  1. □いびきを家族から指摘される
  2. □夜間、呼吸が苦しくて目がさめることがある
  3. □唇が乾燥しやすい
  4. □起床時、口の中が乾燥して、のどがイガイガする、痰が絡む。日中になると楽になる。
  5. □口臭を指摘されることがある
  6. □のどの痛み発熱を繰り返している
  7. □よく歯を磨いているはずなのに、虫歯が多い
  8. □鼻詰まりがある
  9. □歯並びが悪い

鼻はせまくないのに鼻がつまる

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これが一番厄介な鼻詰まりです。

冒頭で述べた、鼻詰まり“感”というやつです。

まず、私たちはどうやって鼻が通っていると感じているのでしょうか?

それは、鼻の中を通る空気の冷たさを感じることで、『鼻が通っている』と認識できています。

今、一度大きく鼻から息を吸ってみてください。

どうでしょうか?

冷たい感じがしますよね。

これを毎回の呼吸の際に、脳が認知して鼻が通っていると感じることができるのです。

それが、以下の状態になると冷気を感じにくくなってしまいます。

  • 鼻の粘膜の表面に鼻水が多すぎる
  • 鼻の粘膜が炎症や乾燥により傷んでいる
  • 鼻の中が狭く空気の気流が発生しにくく、粘膜への刺激にならない

不思議な鼻詰まりとして、Empty nose syndrome(空の鼻症候群)という病気があります。

これは、内視鏡でみると鼻は通っていますが、本人は強い鼻詰まり“感”を自覚するという病気です。

この病気の特徴としては、過去に手術で鼻の中にある下鼻甲介を大幅に切除された経験があることです。

この下鼻甲介は鼻腔の中の気流を最前線で受ける部位になります。

ここが大きく切除されたことで、鼻内の気流がうまく生じず、鼻の冷たい感覚を認知できなくなるため、強い鼻詰まり感を自覚します。

逆説的鼻閉と言われ、有効な治療法はまだありません。

気流が鼻の通りにおいて、非常に大切ということがよくわかる疾患です。

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鼻づまりの症状があらわれる主な病気

ここでは、医師が目にする、鼻詰まりを引き起こす病気を解説していきたいと思います。

図 ① や ②のように、病気はあるが、自覚していないという場合もあります。

基本的に『急性○○病』といった表記の疾患は、症状があり患者さんも困っているパターンが多いです。

しかし、慢性疾患や腫瘍性の病気は気付きにくいか、症状があってもそれほど困っていないので、放置しがちになります。

その中に稀ではありますが悪性腫瘍なども含まれるため注意が必要です。

急性の病気

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かぜ

かぜは、医学的には急性上気道炎と呼ばれます。

上気道とは、鼻から喉頭を指し、そこにウイルスが感染して炎症を起こしている状態が急性上気道炎です。

これらのウイルスは、鼻から喉にかけての粘膜の細胞に侵入して細胞を壊し、炎症が起こって粘膜が腫れ上がります。

この腫れは1週間ほどで引いていきます。

昨今、流行した新型コロナウイルス感染症は、重症肺炎や全身性の血栓症、長期的な後遺症などの合併症を起こし、上気道のみで病気が終わらないことがあるため、かぜとは別物です。

急性副鼻腔炎

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急性副鼻腔炎は急性上気道炎で免疫力が下がり、そこに細菌感染が起きている状態です。

ウイルスと細菌は違うものです。

ウイルスは粘膜の細胞に入り込み、鼻からのどにかけて広い範囲でダメージを与えます。

一方で、細菌はウイルスによりダメージを受け、免疫機能が落ちた場所に住み着き、局所的に感染を起こします。

鼻の中、特に副鼻腔は狭い構造であり、人間の体温と同じ温暖な環境なので、感染が成立しやすいです。

感染後、鼻粘膜の免疫や、鼻の中を掃除する働きをする粘液線毛機能により、多くの細菌は膿となって副鼻腔内からのどの方へ垂れていきます。

それによって、鼻閉を自覚し、粘っこい膿汁が後鼻漏となり、痰がらみや咳の症状をおこします。

多くの方は1~2週間くらいで症状が落ち着きますが、アレルギーを合併する方や、鼻の構造が悪い方では、長期間改善せず慢性化するので注意が必要です。

発症から4週間以内に症状が改善するものを急性副鼻腔炎、3ヶ月以上症状が持続するものを慢性副鼻腔炎と呼びます。

アレルギー性鼻炎(花粉症)

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花粉症はアレルギー性鼻炎の中の一つの疾患です。

花粉はそれ自体では無害ですが、アレルギーが起こりやすいコンディションの時に、体の中に花粉が入り込むと、免疫反応がおこり、花粉を異物と認識するリンパ球が生み出されます。

このリンパ球から花粉特異的IgEという、花粉だけに反応する抗体が作られます。

これが鼻の粘膜に存在する肥満細胞という炎症を引き起こす細胞に働き、【花粉―IgE抗体―肥満細胞】というセットができると、ヒスタミンやロイコトリエンといった炎症を誘発する物質が産生

そして、鼻汁やくしゃみが起こるとともに、鼻の粘膜が腫れ上がり、鼻詰まりを起こします。

このアレルギー反応には続きがあり、好酸球というアレルギーを引き起こす白血球の一種が、鼻の粘膜に呼び寄せられ、粘膜の炎症を悪化させ、炎症を慢性化させてしまうのです。

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花粉症の場合、花粉が鼻に付着するのが止まらない限り鼻詰まりはどんどん悪化します。

基本的にアレルギー性鼻炎では、鼻の構造のところでお話した鼻甲介(特に下鼻甲介)が腫れ、空気の通りを悪くなるのが特徴です。

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花粉にはいろいろな種類がありますが、大きく樹木花粉と雑草花粉に分かれます。

  • 樹木花粉:スギ、ヒノキ、シラカバ、ハンノキなどの高い木
    特徴:県をまたぐくらい遠くまで飛散
  • 雑草花粉:ブタクサ、ヨモギ、イネなどの雑草
    特徴:草花粉は近くまでしか飛散しない

家の近くにブタクサがたくさん生えている場合、症状が発症する可能性が高いが、家の近くから離れると症状が出ません。

また花粉が飛散する時期には季節性があり、代表的なスギ花粉は2月くらいから本格的な飛散が始まり、ゴールデンウィーク頃まで続くのが一般的です。

その頃にヒノキ花粉の飛散が増え始め、バトンタッチします。

早い年ではスギ花粉は12月くらいから飛散します。

以下の表は花粉飛散時期がわかるカレンダーです。

あまり知られていませんが、秋や夏の花粉もあります。

これらは雑草で近所の公園や川沿いの土手などに生息しています。

近くにこのような植物が生えているようでしたら、これらのシーズンも注意しましょう。

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慢性の病気

アレルギー性鼻炎(通年性アレルギー)

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通年性とは読んで字のごとく1年中続くという意味です。

花粉症は上記のようにシーズンごとに飛散する花粉が異なるので、季節性アレルギー性鼻炎とも言われ、通年性とは逆のものです。

発症するメカニズムは花粉症の先述の通りですが、関連する抗原物質が違います。

通年性アレルギーの原因となるのは、主にダニ・ハウスダストです。

ハウスダストは家の冷蔵庫やソファの隅にあるホコリのことですが、ここにはたくさんの抗原物質が含まれており、主に抗原となる成分はダニです。

ダニに対して感作が成立している方のほとんどが、ハウスダストにも感作しています。

その他の通年性抗原としては、カビ類、イヌ、ネコの皮膚やゴキブリ、ガなどです。

季節性のアレルギーは花粉飛散期のみの症状ですが、通年性は1年中、抗原を浴びることになります。

一般的に症状の強さで比較すると、季節性アレルギー>>通年性アレルギーとなります。

これは、普段症状がない人が、急に花粉飛散シーズンになり発症することで、強烈な症状が出現するからです。

元気な人がカゼウイルスに急激に感染が起こるとしんどい状態になるのと一緒です。

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一方で、通年性アレルギーの方は常に発症している状態と考えてよいでしょう。

それではこのような人が一年中、かぜを引いたようなしんどい状態かと言われたらそうではありません。

アレルギー反応は起きてはいるが、体が慣れているために花粉症のような明らかな症状が無い人が多いのです。

つまりこれが、図 ②のような状態を形成していて、医師の見た診察所見と患者さんの症状とのギャップができてしまいます。

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鼻中隔弯曲症

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鼻中隔弯曲症は、鼻腔内の図で示した右の鼻腔と左の鼻腔を隔てる板が、左右どちらか、もしくは両方に曲がってしまっている状態です。

これによって、鼻詰まりが生じます。

どちらかに強く曲がった場合は、反対側の鼻が通るのではないか?と思われるかもしれません。

ですが、広い方はそのスペースが空いた分、下鼻甲介粘膜に負担がかかり腫れるので、結果両方とも鼻が狭くなります。

また、鼻中隔弯曲による鼻詰まりの自覚は、鼻中隔の後方より前方で自覚されやすいという特徴があります。

慢性副鼻腔炎(鼻ポリープなし)

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急性副鼻腔炎を繰り返し、粘膜の炎症が持続的になると、鼻腔と副鼻腔の換気をつける経路が塞がってしまいます。

それによって、炎症はさらに悪循環となり悪化して、慢性副鼻腔炎の状態となり、副鼻腔に溜まった膿が少しずつ出てきます。

一般的には蓄膿症とも呼ばれるものです。

持続的にのどに膿が垂れ込んでくることで、痰が切れない感じが続き、咳症状(後鼻漏による咳)も引き起こします。

また、溜まった副鼻腔の出口付近の粘膜は強く腫れることで、鼻閉も片側だけ強くなることがあります。

基本的には、片側の悪い鼻のみの病気です。

原因としては以下のようなものがあります。

  • アレルギーや鼻中隔弯曲症により、鼻の形態が狭いことで膿が溜まりやすい構造で炎症が長引きやすい
  • 歯が原因で慢性副鼻腔炎を起こす(歯性上顎洞炎)
  • 副鼻腔真菌症(カビが副鼻腔に棲みつく)

慢性副鼻腔炎(鼻ポリープあり)

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最近では、慢性副鼻腔炎の分類として、鼻ポリープという腫れものができるタイプとできないタイプの2つに分けて考えています。

鼻ポリープは医学用語で鼻茸とも呼ばれています。

この名前の由来は、木の切り株から生えるキノコのように、手術で取り除いてもまた生えてくる性質があるためです。

鼻ポリープを伴わない慢性副鼻腔炎は、鼻の構造や歯など外的な原因があり、その部分だけ(関係する副鼻腔)に炎症が起こる病気と説明しました。

一方で、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎は、基本的に患者さんの体質が関係する慢性副鼻腔炎です。

特に最近注目されている慢性副鼻腔炎として、好酸球性副鼻腔炎という疾患があります。

この副鼻腔炎は副鼻腔の中に膿が溜まることで粘膜に炎症を起こすのではなく、体質的に好酸球という血球が体内に多く存在し、好酸球が鼻副鼻腔の粘膜に炎症を起こす病気です。

炎症は一部分の副鼻腔の粘膜に起こるのではなく、副鼻腔全体に起こり、両鼻の慢性副鼻腔炎となります。

この粘膜の炎症は強力で、副鼻腔の粘膜をブヨブヨの厚ぼったい状態にしてしまいます。

その厚ぼったい粘膜が過剰になると、大きなポリープが形成され、それが鼻詰まりの原因です。

好酸球性副鼻腔炎は、副鼻腔の中で好酸球性ムチンと呼ばれる、かなり粘っこい鼻汁を生み出します。

これがのどに垂れると、頑固な鼻詰まりとのどの違和感、咳の原因となります。

これは普通の鼻ポリープを伴わない慢性副鼻腔炎の症状よりしんどい症状です。

以下は好酸球性鼻副鼻腔炎のその他の重要な特徴です。

  • 嗅覚障害で自覚することが多い
  • 気管支喘息を合併しやすい(好酸球性鼻副鼻腔炎患者の50~70%に喘息合併)
  • 治療は手術になることが多いが、術後再発率は高い(術後6年で50%くらいの再発)

腫瘍性の病気

全身のどこの部分にも腫瘍はできますが、鼻の中にできる腫瘍は鼻腔腫瘍と呼ばれます。

腫瘍とは、生体内の細胞が異常に増殖し、その結果として形成される塊や組織の異常のことを言い、先ほど副鼻腔炎で紹介したポリープとは別物です。

鼻の中の腫瘍は良性がほとんどですが、稀に悪性腫瘍もあります。

悪性腫瘍の場合は、副鼻腔炎と考えられて長らく経過を見られていた患者さんも多く、発見されたときには進行ガンとなっていることもあります。

以下は鼻腔腫瘍の特徴です。

  • 片側のみの腫瘍が多く、鼻詰まりも片側のみ
  • 副鼻腔の入口付近に根を張り発生することが多いので、副鼻腔の出口を閉鎖して副鼻腔炎を併発
  • 鼻詰まり、顔面が腫れ、ほほの痺れ感があるのは悪性腫瘍の可能性あり

よって、安易に片側のみの鼻詰まり・副鼻腔炎を放置することは危険です。

以下に、慢性副鼻腔炎と考えられていたが、鼻腔内所見で、鼻副鼻腫瘍であった症例を提示します。

鼻腔腫瘍は、副鼻腔炎を合併しやすく粘膜の浮腫・排膿を起こしていることが多く、画像検査を行わず、肉眼所見のみの診断では、耳鼻咽喉科医でも判断を誤ることがあります。

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鼻腔内の異物

副鼻腔炎と考え受診される患者さんの中に、稀に鼻に異物が入っている方がいます。

異物が鼻の中に存在すると、感染を起こしてあたかも副鼻腔炎のような症状になります。

片側だけの鼻詰まりや、悪臭(他人から指摘されることも多い)などが特徴です。

異物の種類としては、ティッシュ、お菓子の包み紙、おもちゃ(BB弾、ビーズ、その他部品)などが多いです。

鼻に色々なものを詰めてしまう子供が多いですが、大人でも鼻水が垂れないように鼻にティッシュを入れ、鼻の中をティッシュで拭い、鼻くそを取り除こうとする人がいます。

その際に残ったティッシュが異物となってしまうことがあり、要注意です。

その他の病気

ここでお伝えするのは、実際には病気ではなく、年齢に伴う鼻詰まりや、自分で作り出してしまった鼻詰まり症状です。

加齢性の鼻詰まり

これは、先ほど1−5の『鼻はせまくないのに鼻がつまる』のところで、鼻は冷たい空気の流れを自覚すると、鼻が通っていると認知できると書きましたが、これが関係します。

鼻の粘膜には神経が走っていて、その神経が鼻の感覚を脳に伝えます。

高齢者の鼻粘膜は、萎縮性鼻炎と言って粘膜がしわしわに縮んで、粘液の分泌が悪く、粘膜表面が乾燥しています。

このような状態ですと、鼻を通る気流という考え方からは、Empty nose syndrome(空の鼻症候群)のように、鼻が通っているはずなのに、通っていないと自覚する状態になりやすくなります。

鼻ほじりによる乾燥感による鼻づまり

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鼻ほじりしたら、鼻クソが外れるのだから通りが良くなるのでは?と言われそうですが、それは一時的です。

鼻クソは医学的には痂皮(かひ)と呼ばれます。

これは、手を怪我したときにできるカサブタと考えればわかりやすいと思います。

カサブタは、気になるから剥がしたくなりますよね。

これを剥がすと、ジクジクした液体が出てきて、乾燥してまたカサブタができます。

これを繰り返しているうちに出血や、ばい菌感染を起こして化膿します。

鼻クソ(痂皮)を指で取り除いて、乾燥した粘膜面が出ているときは鼻の粘膜が正常化しているわけではなく、粘膜に気流を感じることがうまくできません。

この乾燥が鼻詰まり感を強く自覚させる原因となります(ドライノーズとも呼ばれます)。

鼻がつまっている方の実際

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実際の鼻詰まりの患者さんは、ここまで説明した一つ一つの原因が単独で起こっているわけではありません。

アレルギー性鼻炎は日本人の2人に1人は発症していますので、鼻詰まりの患者のほとんどがアレルギー性鼻炎をもっていると考えてもよいでしょう。

実際に鼻詰まりで多いのは、以下のパターンかと思われます。

複数の因子が重なった際に、はじめて鼻詰まりを自覚する患者さんが多いと思います。

  • アレルギー性鼻炎+鼻中隔弯曲症
  • アレルギー性鼻炎+鼻中隔弯曲症+鼻の痂皮(鼻を触りすぎ)
  • アレルギー性鼻炎+風邪(急性副鼻腔炎含む)
  • アレルギー性鼻炎+鼻中隔弯曲症+風邪(急性副鼻腔炎を含む)

日常でできる鼻づまりの解消法

だまされたと思って、一度は試してみたい日常でできる鼻詰まり解消法を紹介!

鼻うがい

鼻うがいは、鼻の中にある異物やアレルギーの原因となる物質を洗い流すことができます。

また、これまでには鼻の中の乾燥が鼻詰まりにつながると書きましたが、鼻の中を潤す作用としても有効です。

1日2回くらいを目処に洗浄しましょう。

海外では実績のある鼻炎治療で、最近ではアレルギー性鼻炎に対して有効といったデータがあります。

温熱療法(蒸しタオル)

濡らしたタオルを電子レンジで、人肌より少し熱いくらいに温めます。

それを、おでこから目、鼻にかけて覆います。

眼精疲労に使うこともありますが、鼻にも有効です。

鼻から温かい蒸気をゆっくり吸い、鼻の粘膜を温めます。

すると時間差で鼻通りが改善してきます。

室内の加湿・蒸気吸入

部屋の乾燥は、粘膜である鼻の中の乾燥に直結します。

冬は空気が乾燥するため、部屋(特に寝室など長時間生活する場所)は加湿器を使用し、湿度50%くらいを保ちましょう。

市販の鼻やのどを加湿する機器も、鼻に溜まった粘液を柔らかくして、出やすくすることで鼻詰まりの解消に役立ちます。

ゆっくり入浴

入浴で粘膜を加温・加湿することによって粘膜機能が改善します。

また、足が温まることで鼻粘膜温度が上昇するとともに、鼻粘膜が収縮し、鼻詰まりに有効です。

適切な水分補給

鼻の粘膜の水分は、血管から供給されています。

水分補給をすると最終的に血管の中に水が入っていくことになります。

つまり、鼻の粘膜が潤っているためには、水分補給は欠かさず行うことが必要です。

抗炎症作用のある食物の摂取(緑黄色野菜、オメガ3脂肪酸) 

以下の食材に含まれるオメガ3脂肪酸の摂取は、腸管内の炎症を抑制し、アレルギー反応などを抑えます。

  • ほうれん草
  • チンゲン菜
  • ブロッコリー
  • トマトなどの緑黄色野菜
  • ナッツ類など

ほかにも、乳酸菌やビフィズス菌が含まれる発酵食品の摂取+それらの菌の餌となるオリゴ糖、食物繊維が多い根菜類(ゴボウ、玉ねぎなど)の摂取も腸管内環境を改善し、アレルギーを抑制するためおすすめです。

規則正しい生活を送る

鼻の粘膜は自律神経のバランスによって調整されます。

ストレス、重度の疲労、睡眠不足などは自律神経のバランスを乱す原因です。

それによって過剰に粘膜が浮腫んだりして、強い鼻詰まりが生じます。

ツボ押し

鼻詰まりの原因は?日常でできる解消方法や長引く場合の対処法を紹介

鼻詰まりに効くとされるツボはいくつかあります。

  • 迎香(げいこう):小鼻を両脇、鼻の付け根のくぼみ
  • 印堂(いんどう):眉間の中央
  • 合谷(ごうこく):手の甲の親指と人差し指の間

これらの部位を、1回につき5秒間押して、ゆっくり離すことを繰り返してみましょう。

また、ツボではありませんが、脇の下への圧迫刺激をすると、押した側の鼻と反対側の鼻が通るという神経反射があります。

寝ている時に、右鼻が詰まって苦しい!と感じた時に、左腕を下にして横向きに寝てみると右の鼻詰まりが次第にとれてくるかと思われます。

メントールで鼻詰まり解消法

ほんとにそんなことで解消する?

メントールとは、ミントの葉に含まれる成分で、爽快感や冷感を引き起こす物質です。

これを抽出してタバコ、化粧品、薬品などさまざまな製品に日常で使用されています。

以前は、このメントールの作用は、何となく口や喉が冷たい感じを楽しむためのものとされていました。

しかし、最近になって、人体において温度変化を感知するTRPチャネルという受容体が発見され、鼻の粘膜の感覚を伝える神経にTRPM8という受容体が発見されました。

メントールはこの受容体に結合することで、冷たいという感覚を脳に伝えます。

また、TRPM8は低い温度(特に28℃以下の冷気)を感知すると、メントールがくっついたときと同じ作用がおこります。

この神経の刺激が脳に伝わることで、鼻が通った!と感じることができるのです。

鼻粘膜においてメントールは、冷たい気流が鼻を通ったという感覚を再現してくれる化学物質です。

1-5の『鼻はせまくないにのに鼻がつまる』のところで、鼻は気流として生じる冷たい感覚を認識して、鼻通りを自覚すると記しました。

蒸し蒸しした暑い夏の日に鼻で深呼吸しても鼻通りはあまり自覚できませんが、スキー場で冷たい空気を鼻から思いっきり吸うと、鼻がツーンとしながらも通りを自覚できます。

TRPM8がこの感覚の起点となっていたのでした。 

実際にメントールを用いた鼻の通気性を検討した研究において、鼻腔通気がもともと低下している被験者において、メントールの吸入をすることで大半が自覚的に鼻腔の通気が改善していると感じると報告されています。

また、メントールなど特定の匂いを嗅ぐことで、鼻閉が改善されるようになり、嗅覚刺激は鼻詰まり感を和らげる可能性についても報告されています。

実践例

メントールを日常生活における鼻詰まりへの応用を考えてみたいと思います。

メントールは、精油として市販でもネット販売でも購入することが可能です。

メントールは鼻詰まりだけでなく、副交感神経を優位にして自律神経のバランスを安定させることでリラックス効果もあります。

鼻詰まり感の改善とリラックス効果として、以下の効果があります。

  • マスクにメントールを垂らす
  • ハンカチにメントールを垂らして、吸入する
  • お風呂にメントールを数滴垂らす

入浴は、それだけでも副交感神経の機能を高める効果や、入浴後の鼻閉改善効果があるので、メントールを併用することで更なる効果も期待されます。

しかし、メントールは肌に付着すると、人によっては皮膚のかぶれなどを生じることがあり、肌に合わない場合は使用しない方がよい場合もあります。

スティック状のメンソール(ノーズミントについて)

スティック状のメントールとして、ノーズミントがあります。

これは、どこでも手軽にメントールによる鼻の通り感を自覚することができるスティックです。

鼻の入り口付近を鼻前庭部と呼びますが、ここは他の部位より感覚過敏で、実験的にこの部位を気流で刺激すると鼻の通気感が増し、逆に麻酔すると鼻詰まり感が強くなると言われています。

ノーズミントをこの部分に塗ることで、メントールの成分によって爽快感が得られます。

鼻詰まりが長引いている場合の対応

日常生活でできる対応を実践しても鼻詰まりが改善しないようなとき、それは2.のところでお話したような病気である可能性があります。

日本人の2人のうち1人がアレルギー性鼻炎です。

通年性アレルギーによって、症状をほとんど自覚していない方もいれば、日常生活に支障が出るくらい症状に困っている方もいます。

鼻詰まりを放置していると、知らず知らずのうちに生活の質を落とし、仕事や学業のパフォーマンスを低下させる原因となっている可能性もあります。

はたまた、鼻詰まりの原因が腫瘍や進行性の病気の可能性があるので、注意が必要です。

最低でも鼻詰まりが2週間以上続いて、『つらいなぁ』と感じることがあるようなら、医療機関への受診をお勧めします。

まずは、耳鼻咽喉科のクリニックへ受診して、鼻のファイバーでしっかり鼻の中を見てもらいましょう。

それだけで、鼻詰まりの原因を紐解くヒントがわかります。

場合によっては、大きな病院へ紹介されることもありますが、それは追加の検査が必要で、クリニックレベルでは対応できない病気である可能性が高いと考えましょう。

まとめ

鼻詰まりは、それだけで生活の質を落とすだけでなく、睡眠障害との関連性が指摘されています。

睡眠障害は、生活習慣病や精神疾患などとも関連しており万病のもとです。

社会的には、仕事のパフォーマンスの低下や、苛立ちやすさなど性格変容を起こし、対人関係にも大きな影響を及ぼします。

鼻は呼吸の出入り口です。

私は耳鼻咽喉科医として、『鼻を制するものは、呼吸を制する!』と思って診療しています。

鼻詰まりが改善した患者さんは、世界の見え方が変わった!と感想を仰られる方もいます。

本コラムを読んでいただき、一人でも鼻詰まりが改善し、解像度の高い毎日を送ることができる人が増えてくれたら嬉しいです。

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参考文献

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  • Rochester DF et al. Am Rev Respir Dis. 1979
  • 日向 貢. 日耳鼻. 1955
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  • 藤枝 重治ら. 日耳鼻. 2015
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  • Clarke RW et al. J Laryngol Otol. 1994
  • Jones AS et al. Acta Otolaryngologica. 1986

この記事を書いた人

No,003 永田 善之

経歴

  • 日本大学医学部医学科 卒業
  • 社会保険横浜中央病院 初期研修医
  • 日本大学医学部 耳鼻咽喉・頭頸部外科 助手、助教、臨床准教授
  • 独立行政法人国立病院機構埼玉病院 耳鼻咽喉科部長

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