
アトピー肌のスキンケア方法|肌にやさしいスキンケアと避けたい成分とは?
アトピー性皮膚炎の方の肌は、健康な肌とは異なる特性があり、普通の肌向けのスキンケアでは対応しきれない場合があります。
しかし、正しい知識があれば、肌に合うスキンケアを見つけることが可能です。
この記事では、アトピー肌の方が知っておきたいスキンケアの基本から、避けたい成分、おすすめの保湿成分を分かりやすく解説します。
国内のアトピー性皮膚炎患者は約51万3千人もおり、多くの方がスキンケア選びに悩んでいます。
この記事を参考に、あなたの肌に合ったスキンケアを見つけてください。
Contents
アトピー肌にスキンケアが必要な理由

バリア機能の低下
アトピー性皮膚炎の肌は、健康な肌と比べて「皮膚のバリア機能」が著しく低下しています。
このバリア機能とは、肌の水分が外に逃げるのを防ぎ、外部からの刺激物質の侵入をブロックする重要な働きのことです。
アトピー性皮膚炎患者の皮膚では細胞間脂質(特にセラミド)が減少し、角質層の保湿機能が低下していることが明らかになっています。
その結果、以下のような悪循環が生まれます。
- 肌が乾燥しやすくなる
- 外部からの刺激を受けやすくなる
- かゆみを感じやすくなる
- かくことで皮膚がさらに傷つく
- 炎症が悪化する
このため、アトピー肌には「失われたバリア機能を補い、健やかな肌状態を維持する」ためのスキンケアが欠かせません。
正しいスキンケアを続けることで、この悪循環を断ち切ることができます。
市販品によるトラブル
「敏感肌用」や「低刺激」と表示されている市販品でも、アトピー肌には合わない場合があります。
まず、アトピーの症状や原因となる物質は人それぞれ異なるためです。
ある人には良くても、別の人には刺激となることが珍しくありません。
また「低刺激」という表示があっても、実際の成分を確認すると香料やアルコールが含まれていることがよくあります。
パッケージの宣伝文句だけでなく、必ず成分表示を確認するクセをつけましょう。
さらに、有効成分が入っていても、濃度が高すぎたり他の成分との組み合わせが良くない場合、肌に合わないこともあります。
アトピー肌の人が避けたいスキンケア成分

アトピー肌の方が特に注意すべき成分について解説します。
以下のような成分表示がある製品は避けましょう。
アルコール(エタノール)
アルコール(エタノール)は皮膚の水分を奪い、乾燥を悪化させる可能性があるので使用は控えましょう。
また、皮膚への刺激も強く、アトピー肌には適していません。
以下の成分名が表示されている製品は避けましょう。
- エタノール(ethanol)
- エチルアルコール
- アルコール(alcohol)
意外にも、化粧水や乳液にも含まれていることがあるので注意が必要です。
香料・着色料
香料や着色料は肌への刺激となりやすく、アレルギー反応を引き起こす可能性があります。
特にアトピー肌は敏感になっているため、これらの成分は使わない方がベターです。
アトピー患者の多くが保湿剤に含まれる香料でかぶれを経験したという報告もあります。
以下の成分名が表示されている製品は避けましょう。
- 香料
- フレグランス(fragrance)
- parfum
- 青色1号、青色2号(など)
- 赤色102号、赤色104号(など)
防腐剤(パラベンなど)
防腐剤自体は製品の安全性を保つために必要ですが、パラベン系防腐剤は一部の方にアレルギー反応を起こすことがあるので注意しましょう。
以下の成分名が表示されている製品は注意が必要です。
- メチルパラベン
- エチルパラベン
- プロピルパラベン
- ブチルパラベン
もし過去にパラベンでかぶれた経験がある方は、これらの成分を含まない製品を選ぶようにしましょう。
界面活性剤(強洗浄力タイプ)
洗浄力の強い界面活性剤は、肌に必要な皮脂まで取り除いてしまい、バリア機能をさらに低下させる可能性があるので使わない方が無難です。
以下の成分名が表示されている製品は注意が必要です。
- ラウリル硫酸Na
- ラウレス硫酸Na
- ラウレス-4
- SLS(Sodium Lauryl Sulfate)
- SLES(Sodium Laureth Sulfate)
洗顔料やボディソープに多く含まれているので、特にチェックが必要です。
ピーリング成分(AHA・BHA)
AHA(フルーツ酸)やBHA(サリチル酸)などのピーリング成分は、角質を取り除く作用があります。
しかし、アトピー肌では角質層が薄くなっていることが多く、さらに刺激を与えるとかえって症状を悪化させる恐れがあります。
以下の成分名が表示されている製品は避けましょう。
- グリコール酸
- 乳酸
- サリチル酸
- フルーツ酸
- AHA(Alpha Hydroxy Acid)
- BHA(Beta Hydroxy Acid)
アトピー肌の方は基本的に使用を控えた方が安心です。
特に炎症が起きている時期は絶対に使わないようにしましょう。
アトピー肌の人に使ってほしい保湿成分

次はアトピー肌に効果的な保湿成分について解説します。
以下のような成分表示がある製品を積極的に選びましょう。
セラミド(ヒト型)
セラミドは肌のバリア機能の要となる成分で、アトピー性皮膚炎患者の肌では特に不足しています。
積極的に補ってあげることで、肌の水分保持力が高まります。
セラミドには種類があり、「ヒト型セラミド」(セラミド1、セラミド2、セラミド3など)が最も肌に近い構造で効果的です。
以下の成分名が表示されている製品を選びましょう。
- セラミドNG
- セラミドNP
- セラミドAP
- セラミド1、2、3
- ヒト型セラミド
- スフィンゴ脂質
ヘパリン類似物質
ヘパリン類似物質は、医療現場でもアトピー性皮膚炎の治療に使用される成分です。
以下の3つの作用があります。
- 保湿作用:角質層への浸透と持続的な保水
- 血行促進作用:皮膚の新陳代謝を活性化
- 抗炎症作用:皮膚炎症の緩和
ヘパリン類似物質は「アトピー性皮膚炎に伴う乾皮症」に対する医療機関での処方が認められており、その効果は医学的に確立されています。
ただし、炎症が強くじくじくしている状態では、血行促進作用により症状が悪化する場合があります。
炎症が落ち着いてから使用するのがポイントです。
ワセリン
ワセリンは肌表面にバリア機能の代わりとなる保護膜を作り、水分の蒸発を防ぎます。
肌をコーティングして外部からの刺激から守ってくれるので、特に乾燥が強い冬場や、炎症が治まってきた時期に使うと効果的です。
以下の成分名が表示されている製品を選びましょう。
- 白色ワセリン
- 黄色ワセリン
- ワセリン
- ペトロラタム(petrolatum)
- ミネラルオイル
ワセリンには種類があり、それぞれ使い分けると良いでしょう。
白色ワセリンは最も純度が高く、不純物が少ないため赤ちゃんにも使えます。
黄色ワセリンは白色ワセリンより精製度は低いものの、一般的に価格が3分の1程度と経済的で、広い範囲に使いやすいです。
グリセリン
グリセリンは低刺激で、多くのアトピー患者に使用されている成分です。
空気中の水分を引き寄せることで、肌の保湿を行います。
以下の成分名が表示されている製品を選びましょう。
- グリセリン(glycerin)
- グリセロール(glycerol)
- グリセリル
- 濃グリセリン
肌馴染みが良く、べたつきもあまりないので使い心地が良いのも特徴です。
一部のクリニックでは、赤ちゃんのアトピー性皮膚炎に対してグリセリンを生理食塩水で薄めたものを保湿剤として処方することもあります。
アミノ酸系保湿成分
肌の天然保湿因子(NMF)の約40%はアミノ酸で構成されています。
アトピー肌ではこのNMFが不足していることが多いため、アミノ酸系の保湿成分を補うと効果的です。
以下の成分名が表示されている製品を選びましょう。
- セリン
- グリシン
- アラニン
- アルギニン
- ピロリドンカルボン酸Na
- 天然保湿因子(NMF)
これらのアミノ酸は、肌のうるおいを維持します。
また、アミノ酸系の洗浄成分は刺激が少ないので、アトピー肌の方には特におすすめです。
アトピー肌の人がスキンケア製品を選ぶときの注意点

「敏感肌用」「低刺激」といった表示があっても、必ずしもアトピー肌に適しているとは限りません。
ここでは、製品選びで大切なポイントを紹介します。
まず、パッケージの表面の宣伝文句だけでなく、成分表示をしっかりと読むことが大切です。
前述の避けたい成分が含まれていないか、使いたい保湿成分が入っているかをチェックしましょう。
新しい製品を使う前には、必ずパッチテストを行うのがおすすめです。
腕の内側などに少量塗り、24〜48時間様子を見て赤みやかゆみが出ないか確認してから本格的に使いましょう。
これで肌トラブルのリスクを大幅に減らせます。
また、症状の程度に合わせて製品を選ぶことも大切になります。
炎症が強い時期には刺激の少ないシンプルな成分のものを、安定期には保湿力の高いリッチなテクスチャーのものを、というように使い分けると効果的です。
何よりも、自己判断だけで進めるのではなく、市販品でも使用前に皮膚科医に相談するのが一番安心です。
専門医の視点から、あなたの肌状態に最適な製品を提案してもらえるので、定期的な通院をおすすめします。
アトピー肌の人が気をつけたい日常のケア習慣

スキンケア製品選びと同じくらい大切なのが、日常のケア方法です。
肌にやさしい洗い方
お肌を清潔に保つことは大切ですが、洗い方を間違えると肌バリアをさらに傷つけてしまいます。
正しい洗顔のポイントは以下の通りです。
- ぬるま湯(38-40℃)を使う(43℃以上の熱いお湯は避ける)
- 洗顔料をしっかり泡立ててから使う
- 手のひらで優しく洗い、肌をこすらない
- 首や関節部分のしわも丁寧に洗う(力は入れすぎない)
- 最後はぬるま湯でしっかりすすぐ
特に最後のすすぎは重要です。
洗顔料の成分が肌に残ると刺激の原因になるので、髪の生え際やあごのラインまで丁寧に洗い流しましょう。
洗顔料選びでは、洗浄力が強すぎないアミノ酸系や弱酸性のものがおすすめです。
肌本来のうるおいを守りながら、やさしく汚れを落としてくれます。
摩擦や刺激を減らす工夫
アトピー肌は日常生活のさまざまな刺激で悪化することがあります。
肌に直接触れる衣類は綿100%の素材を選び、縫い目が肌に当たらないデザインだとなお良いでしょう。
洗濯時は適量の柔軟剤を使うと衣類が柔らかくなり、摩擦による刺激を減らせます。
室内環境も大切で、湿度を50-60%に保ち、定期的な掃除でダニやホコリを減らすことがアトピー肌の悪化防止につながります。
加湿器や空気清浄機を活用しながら、環境を整えていきましょう。
症状悪化した場合のスキンケア
症状が悪化した場合は、炎症を悪化させない対応が重要です。
炎症が強くじくじくしている時は、刺激の少ないシンプルな成分の保湿剤に切り替え、ヘパリン類似物質などの血行促進作用のある成分の使用は一時中止しましょう。
患部が熱を持っている場合は、清潔な冷たいタオルで短時間冷やすと症状が和らぐことがあります。
何より大切なのは、症状が悪化したら自己判断せず、早めに皮膚科を受診することです。
まとめ
アトピー肌のスキンケアは、自分の肌をいかに理解するかが大切です。
肌の状態に合わせて必要な成分でケアをすることで、アトピーの悪化を防ぐことができます。
重要なポイントを改めて整理しました。
- 成分の見極め:避けるべき成分と取り入れたい成分を知る
- 表示より成分表:「敏感肌用」より実際の配合成分を確認
- 日常ケアの徹底:正しい洗い方と摩擦・刺激の回避
- 状態別の対応:症状変化に合わせたケア方法の使い分け
- 専門家との連携:皮膚科医による定期的なチェックと相談
アトピー肌との付き合いは長期戦になることが多いですが、正しい知識と適切なケアがあれば快適な毎日を送ることは十分可能です。
一人で悩まず、皮膚科専門医と相談しながらあなたの肌に最適なスキンケア方法を見つけていきましょう。
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参考文献
アトピー性皮膚炎の要因(どうしてなるのか) | 患者・家族の方へ | 認定NPO法人アレルギー支援ネットワーク
敏感肌さん必見!できれば避けたいスキンケア成分って? – 【公式】定額制セルフ美顔エステDIANA(ダイアナ)
アトピーの塗り薬と保湿剤の選び方・おすすめの使い方 | 肌の洗浄と保湿・アトピーのスキンケア